社長よりも偉いもの 新卒に見捨てられた会社の復活物語
社長よりも偉いもの 新卒に見捨てられた会社の復活物語


 初めて採った新卒5人のうち、4人までが6月には辞めてしまったテクノマスタ社。知り合いのうまく回っている会社の社長に新人に逃げられない方策を訊ねてみようというところから話は始まる。
 単純に、入ってきた新人の扱い方を工夫すれば良いと考えていたテクノマスタの社長に突きつけられた現実は、「ビジョンのなさ」。新卒に限らず全社員が何を目標に走っていったら良いのかを指し示す道標がないということである。
 私の知る会社でも、この「ビジョン」がしっかりしている会社とそうでない会社がきれいに二分される。 個人的には「ビジョン」という言葉は分かったような気になるだけで中身のない言葉だと感じており、それこそビジョンと言った時点ですでにビジョンが形骸化しているような印象さえ受けるので、「この会社は何についてのプロ集団なのか」という言葉を使うことにしている。自分たちは何を持ち、その持っているものを通じて誰に何を提供したいのか、それを明確にするということだ。
 ひとりひとりはそれなりに平均以上に優秀なのに、チームや会社がちぐはぐなのを良く見かける。それぞれがそれぞれの思惑で動いたら、完成するものも完成しなくなるのは当然のことであるのに、さすがにそこまでひどい状況にはならずになまじっか「なんとかなって」しまうことで現状是認となっているようなケースだ。進む方向を初めからある程度そろえておくことでより効率的に、より的確な仕事をすることができるようになるし、余裕が出たところでさらに一歩上のレベルで仕事ができるようになる、という好循環を生むことができるのに、非常に勿体ないと思うのである。


 ・・・・ということをこの本は現場のひとりひとりに問うているものではない。そういう方向性を示せないトップに対して、方向性(ビジョン)を皆に示し、理解させること(浸透させること)の重要性を問うているのである。
 一般社員向けの自己啓発本(気づきを与えてくれる本)はあるが、これは珍しく中小企業の社長向けに(あるいはその視点で考えながら仕事をしている将来の社長向けに)書かれた本と感じた。 ストーリー仕立てで読みやすく、しかし随所に本質に迫る言葉があり充実感を得られる本であると思う。
 また、辞めさせない方策ではなく、気持ちよく辞めてもらうための場作りを提起している点にも共感した。


 忘れた頃にもう一回読んでもいいな、と思った本。
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